前年度までに明らかにしたウサギ飼料への難消化性糖質の添加が血中尿素の盲腸内バクテリアへの移行量を増大させ,食糞を介した窒素利用性を改善するという現象が,ウサギの増体や成長率に反映するか確認することをめざして,今年度は難消化・発酵性糖質マンニトールの飼料への添加が成長中のウサギの成長や窒素蓄積に及ぼす影響を調べた。 在来小型種ウサギ(35日齢)を用い試験飼料(グルコース5%(対照),マンニトール5%)を与えて61日間飼育し,その間2回代謝試験を行い,窒素出納を評価し,飼育試験終了時には,血液(動脈,門脈),肝臓,盲腸,結腸,枝肉を採取した。盲腸,結腸については内容物中の有機酸量,微生物態タンパク質量,総タンパク質量などを測定し,血液については尿素態窒素濃度を測定した。 得られた結果から,試験期間の前半と後半のマンニトールの効果に差異があることが認められた。すなわち飼育試験後半にのみ所期に期待されたマンニトール添加による窒素利用効率改善効果(尿中窒素排泄量の減少と吸収された窒素量(可消化窒素量)に対する蓄積窒素の割合の増大,盲腸内微生物態タンパク質量の増大)が発現したものの,試験期間全体では飼料効率や窒素蓄積効率,枝肉重量にはマンニトール添加効果を示すことはできなかった。 試験前半では,尿中窒素排泄量や窒素利用効率に対するマンニトール添加の効果が認められなかっただけでなく,むしろマンニトール添加群の増体量がわずかではあるが,グルコース群と比べて低下傾向にあった。このことは,試験期間前半ではマンニトールの窒素代謝に対する効果はほとんど発現せず,マンニトールのエネルギー源としての利用性がグルコースと比較して低いことと関係する可能性が示唆された。 以上からマンニトールの窒素利用性改善効果発現の条件として,ウサギの成長段階と関係する盲・結腸の機能の成熟が必須と考えられる。
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