研究概要 |
反芻動物の周産期における脂肪肝の促進要因としての発酵飼料由来のアルコールに着目し,アルコール摂取に伴う肝臓での代謝への影響を明らかにすることを主目的としている。初年度は,アルコール摂取による循環血中成分への影響を調べるために,成雌ヒツジ4頭の第一胃内にエタノール50mLを5日間投与する試験区と対照区としての無投与区を設けて,2期間の反転法により行った。 アルコール投与に伴い,各種血中成分濃度は以下の反応を示した。 1)エタノール濃度は投与2時間後にピーク値を示し,12時間後には無投与レベルまで低下した。 2)投与1日目からグルコース濃度が低下し,乳酸濃度が上昇したことから,肝臓での糖新生に影響することが示唆された。 3)遊離脂肪酸が低下し,逆にケトン体が高くなったことから,末梢組織からの動員脂質の肝臓でのケトン体への変換が促進されるようであった。一方,総コレステロール,HDLコレステロール,中性脂肪,アルブミンが高くなったので,全身での脂質代謝が活発化されると推察された。 4)主に肝臓代謝に関与するアミノ酸トランスフェラーゼ等の各種酵素活性が比較的高く推移する傾向にあった。一方,アンモニアと尿素濃度に差がなかったことから,この投与レベルでは肝臓組織へのダメージが小さいものと判断された。 5)カルシウムと無機態リン濃度には影響が認められなかったが,鉄濃度が上昇したので,肝臓でのヘム化合物分解が促進される可能性が考えられた。 6)次年度の注入試験の予備実験として,エタノール濃度の投与方法を検討した結果,50mL投与後,5mL/分の定速注入によって,8~10mg/dLの血中濃度が維持できた。 以上のことから,アルコールは反留動物の肝臓代謝に顕著な影響を与えることが示された。
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