最終年度である本年度は、昨年度に引き続き、1)集落周辺に出没するシカの生態及び行動特性の解明と、2)野外行動実験による知覚及び運動特性の解明という2つの研究課題を並行して実施した。1)の課題については、被害発生地域において、集落周辺に生息するニホンジカの行動を赤外線カメラ(動画)による自動撮影装置を用いて記録し、集落への侵入経路や、そのときの行動の特徴について解析を行った。また、本年度も集落に出没し捕獲されたメス1頭にGPS発信器を装着し、その後の行動を追跡する計画であったが、こちらについては実施できなかった。2)の課題については、昨年度は、京都精華大学キャンパス内に飼育されている個体と野生個体を対象に、音声に対する反応や馴化の過程にあらわれる行動の変化などについて収集した資料の予備的な解析をおこなったが、多数個体が同じ敷地内に飼育されているため、詳細な実験を行うことが困難な状況であった。そこで今年度は、岡山理科大学の協力を得て、岡山理科大学で飼育されている比較的馴致の進んでいるニホンジカ個体2頭を対象として、ニホンジカを対象としたオペラント条件付けを試みた。具体的には、踏み板式スイッチと秒数をコントロールできるタイマーを作成し、最終的に、色や音の弁別実験が可能なシステム作りを目指した。残念ながら、馴致が不十分な段階にとどまったため、弁別実験を行うには至らなかったが、少なくともこのシステムを使えば、オペラント条件付けが可能であることが明らかとなった。
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