本研究は、採卵鶏の福祉的飼育法について、実際の養鶏現場での導入の容易さを考慮して、従来型のケージの簡易な改良による鶏への効果を検討し、わが国において産業的に受け入れられる福祉ケージの開発を目的とする。バタリーケージが90%以上を占めるわが国の現在の採卵養鶏界においては、まずは一般的なケージに簡易な処置を加えることで、鶏の行動的欲求をある程度満たすような工夫が必要と考えられる。すなわち、巣箱や砂浴び場の設置と維持には手間や費用がかかることから、それらをいかに簡易化あるいは融合・省略できるかを検討する。まず平成22年度には、巣箱と砂浴び場を融合させて、その兼用の可能性を追究するとともに、止まり木の有無による違いを、行動および生理的に比較した。その結果、巣箱と砂浴び場を融合させた場合に、ケージにより両目的に使用される場合と、巣箱としての使用に留まり、砂浴びはそこでは行われない場合が観察された。巣箱と砂浴び場を融合させた場所の明るさが関係する可能性が考えられたため、その場の囲い方を変えたところ、全面を覆い暗くした場合には、砂浴びの発現がほとんど見られず、入り口面だけを覆った場合には産卵および砂浴びの発現が見られたことから、この点について引き続き検討中である。止まり木の有無に関しては、設置した場合のほうが活動性の増加が見られるものの、脚の状態は止まり木の設置によってやや悪化する傾向が見られた。なお、生理指標および生産性については、上記要因の明確な影響は見られていないが、引き続き検討する予定である。
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