本研究は、採卵鶏の福祉的飼育法について、実際の養鶏現場での導入の容易さを考慮して、従来型ケージの簡易な改良による鶏への効果を検討し、わが国において産業的に受け入れられる福祉ケージの開発を目的とした。 平成22-23年度に、巣箱と砂浴び場の融合について検討した結果、巣箱兼砂浴び場の明るさがその利用に関係する可能性が考えられたため、囲い方を変えたところ、全面を覆い暗くした場合には砂浴びの発現がほとんど見られず、入り口面だけを覆った場合には産卵および砂浴びの発現が見られ、覆う面を減らすことでより省資源化が図れた。止まり木は、設置したほうが活動性の増加が見られた。生理指標および生産性には、上記要因の明確な影響は見られなかった。 平成23年度に開始した実験2では、当初予定を若干変更して2羽用の従来型バタリーケージを対照区とし、飼育密度を1.5倍にした大型ケージの1/3を巣箱兼砂浴び場にしその周囲をビニルシートで囲う改良ケ ージA、巣箱兼砂浴び場部分の入口側1面のみにビニルシートを設置した改良ケージBを自作し、A 、Bともに、巣箱兼砂浴び場に人工芝を敷く区と敷かない区を設定した。さらに当初計画にはなかった断嘴の有無についての検討を加え、平成24年度まで継続した。その結果、AよりもBで砂浴び行動や敷料探査行動が多く見られ、羽毛の損傷は少なく、汚卵率が低くなった。巣箱内での産卵率は、人工芝を敷く方が高くなった。また、無断嘴の場合には、夏季にカニバリズムが発生して死亡率が高くなり、開放鶏舎では断嘴をせざるを得ないと考えられた。 産卵は午前中に多く砂浴びは午後に多く発現することから、巣箱と砂浴び場の兼用は可能で、人工芝を敷くことでよりよく利用された。また、入り口側1面だけを不透明ビニルで仕切るだけで、その機能は果たせると判断でき、簡易な改良で福祉の改善が可能であった。
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