本研究は、遺伝子搭載サイズに制限がないヒト人工染色体(Human Artificial Chromosome : HAC)ベクターを利用して、感染症、腫瘍の治療・予防および臓器移植や細胞・組織移植研究のための体細胞クローン由来モデル動物を確立することを目標としている。まず、安定的に蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子改変ネコを作出する。その手法として、GFP-HACベクターを挿入した体細胞を作製し、体細胞クローン技術により、遺伝子改変ネコを作出する。将来的にはHAC上に目的に応じた種々の遺伝子を搭載する。 本年度は、胎児の肺組織から採取した繊維芽細胞にGFP搭載HACを移入し、その移入効率を検討した。なお、GFP遺伝子を搭載した21HACベクターの構造を維持するために、HACベクターを受容細胞に導入する方法として微小核細胞融合法を使用した。さらに、体細胞クローン胚の発育は、移植される体細胞の種類により、その後の胚発育が異なることから、GFP搭載HACを導入した受容細胞を核として、除核卵母細胞と融合・再構築し、受容細胞由来の体細胞クローン胚の発育を比較検討した。その結果、移入効率は細胞の継代により生存性が低下し、その効率は数%であり、さらに、遊離した培養細胞において正常な形態を示した細胞は少なかった。2系統の培養株由来受容細胞をドナーとして融合した結果、60~66%の融合胚が分割し、一部は8細胞期まで発育した。その他関連するネコクローン胚の作成方法の改善目的に、異種間のネコクローン胚の培養条件および処理方法等について検討し、その成果を取りまとめた。
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