本研究は、遺伝子搭載サイズに制限がないヒト人工染色体(Human Artificial Chromosome: HAC)ベクターを利用して、感染症、腫瘍の治療・予防および臓器移植や細胞・組織移植研究のための体細胞クローン由来モデル動物を確立することを目標としている。まず、安定的に蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子改変ネコを作出する。その手法として、GFP-HACベクターを挿入した体細胞を作製し、体細胞クローン技術により、遺伝子改変ネコを作出する。将来的にはHAC上に目的に応じた種々の遺伝子を搭載する。 平成23年度に胎児線維芽細胞からGFP搭載HACを移入した結果、2系統の受容細胞系列の確立ができた。平成24年度は、このGFP搭載HACベクター受容細胞を核として、除核卵母細胞と融合・再構築した。融合時間(30および60 μsec)を比較した結果、HACベクター受容細胞を核とした場合、短時間(30 μsec)が有意に胚盤胞形成率を増加させた。一方、対照として用いた胎児線維芽細胞を核とした場合、長時間(60 μsec)の融合がクローン胚の発育率を増加させた。さらにクローン胚(GFP陽性)を13頭のレシピエントネコの卵管(2-4細胞期胚)に移植した結果、移植後62日目に1頭の子猫(74g)を作出する事に成功した。現在、その子猫の発育性を検討中である。
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