鳥類下垂体におけるプロラクチンの遺伝子発現調節因子としてはこれまでにPit-1が明らかにされている。ほ乳類ではこの他に発現調節に関与する転写因子としてPREBやmPOU (Brn-5)がクローニングされており、レポーターアッセイなどにより、Pit-1とともに発現制御を担っている事が明らかにされている。鳥類ではこれらの転写因子が存在しているか明らかではなかったため、プロラクチン遺伝子の発現やプロラクチンの濃度上昇に伴い発現する就巣行動との関連性が不明であった。本研究ではニワトリ及びシチメンチョウにおけるPREBcDNAのクローニングを試みた。またmPOUの断片クローニングを試みた。PREBcDNAはほ乳類の配列を元にプライマーを設計し、ニワトリ及びシチメンチョウ下垂体より抽出したmRNAより逆転写の後PCRを行い、断片を増幅した。塩基配列決定をした後に断片配列をもとに5'及び3'RACEを行い全長cDNAの配列を決定した。その結果ニワトリとシチメンチョウではそれぞれ1440bp及び1422bpの配列が決定され、アミノ酸は411個からなる事が明らかになった。ニワトリとシチメンチョウでは非常に高い相同性を示した。また、ほ乳類との類似性はアミノ酸コード領域において70%の相同性を示した。mPOUに関してはニワトリの下垂体トータルRNAより部分断片311bpのクローニングに成功した。ほ乳類の該当領域に対する相同性は90%であった。これらの結果より、鳥類の下垂体においてPREB及びmPOUが発現している事が明らかになったことから、Pit-1以外は不明であったプロラクチン遺伝子発現に関する作用機序をさらに詳細に調べる事ができるようになった。
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