本提案課題では、骨格筋特性を調節する機能性小分子RNA(マイクロRNA)を骨格筋マイクロRNAの網羅的発現解析により明らかにし、標的因子や筋線維型の違いに伴う遺伝子発現、選択的スプライシングの調節機構をを解明することをめざす。さらにこの研究を通して家畜の肉質や肉量を変える可能性をマイクロRNAの新規な遺伝子発現調節機能に求め、質的量的食肉生産の向上のための有効指標の発見をめざす。 22年度では、「速筋および遅筋に発現するマイクロRNAの網羅的発現比較、筋線維型制御マイクロRNAおよびその標的遺伝子の予測」を課題とした。対象試料として屠殺直後の成牛から遅筋として咬筋を、速筋として半腱様筋を採材し、各筋より抽出した全RNAからマイクロRNAを調製した。この小分子RNA試料をマイクロRNAの配列および発現解析に用いるとともに、両骨格筋RNA試料についてはミオシン重鎖アイソフォーム型等の特異的マーカーによる特徴づけを行った。特徴づけされた試料中の小分子RNAは次世代型超高速DNAシーケンサーにより網羅的に配列決定され、配列と発現に関する情報からなる大量の基本データを取得した。当初計画していたマイクロアレイおよび定量的PCRに比べ、次世代型シーケンシングによる発現解析が少なくとも同等の再現性、定量性、感度、解析深度を併せ備えることが近年報告されてきたため、結局このシーケンシング工程を最終的にウシ3頭分の2筋肉に対して行い、189種の既知マイクロRNAと38種の新規マイクロRNA候補を検出した。さらに統計的解析によって各マイクロRNAの筋部位間で有意差検定を行った結果、半腱様筋および咬筋に有意に高く発現するマイクロRNA群を検出し、各筋部位に発現するマイクロRNAの全体像を把握することができた。
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