研究課題
昨年度、次世代シークエンサーによる網羅的な配列決定でウシ半腱様筋(速筋)および咬筋(遅筋)から得られた多数のマイクロRNA(miRNA)について、各骨格筋特異的なmiRNA群の高精度なスクリーニングを行うため、false discovery rate(FDR)を基準とする順位検定の適用を検討した。その結果、次世代シーケンサーに適した統計解析プログラムDEseqにより多重検定による擬陽性データまで考慮した高品質なデータを高検出力で得ることができた。これにより各骨格筋に発現する特異的miRNAのプロファイリングを行うことができた。骨格筋間で発現差異が有意に大きいmiRNAを複数特定でき、これを用いて各骨格筋特異的な標的遺伝子を解析プログラムTargetScanにより効率よく予測した。さらにその結果を遺伝子オントロジー(GO)解析等のバイオインフォマティクスで解析し、各骨格筋におけるmiRNAとその標的遺伝子が関与する分子生物学的現象を予測した。新規miRNA候補については、エネルギー計算に基づいた2次構造予測や解析プログラムMiPredを用いた前駆体pre-miRNAの適否判断システムを確立し候補miRNAに適用した。その結果、新規miRNA候補が計30種得られた。一方で、骨格筋特異的なmiRNAの機能を推定するためのウシ初代培養筋細胞を咬筋および半腱様筋より調製した。この細胞系でmiRNAの発現解析を行うために、重要と考えられる候補miRNAについて、miRNAに特異的なPCR(stem-loop PCR)のプライマー等を設計した。一部のmiRNAについてはstem-loop PCRの予備実験を行い、その条件を検討した。
2: おおむね順調に進展している
次世代シーケンシング結果の解析に用いるプログラムを詳細に検討しDEseqを適用した結果、ウシ咬筋および半腱様筋から特異的なmiRNAが予想以上に精度よく多数得ることができた。また新規miRNA候補について各種予測手法により計30種が得られた。miRNAのstem-loop RT-PCRについては予備実験を進めており最終データを得る条件が整った。一方、重要と考えられるmiRNAの機能等解析について検討した結果、ウシ初代培養筋細胞系を用いた筋線維型変換のモデル系に比べ、特性が決定づけられている各骨格筋由来の初代培養筋衛生細胞を用いて比較する系が効率性において優れると判断し、その細胞の調製を行い、今後の解析準備を進めた。
ウシ骨格筋に由来する初代培養筋細胞を調製し、スクリーニングされた候補miRNAについて培養筋細胞の分化過程における発現変化を調べることで細胞分化時の機能・役割を推定する。由来する骨格筋タイプが培養筋細胞のmiRNA発現パターンにどのような影響を与えるかについても検討する。また、標的として予測される遺伝子の発現変動を解析し、候補miRNAの筋線維型制御における機能や予測される標的遺伝子への影響についてバイオインフォマティクスにより検討する予定である。
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