研究課題/領域番号 |
22580327
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
高橋 透 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物生産生理機能研究ユニット, 上級研究員 (20355738)
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キーワード | プロラクチン / カテプシン / 血管内皮細胞 / ウシ / 胎盤 |
研究概要 |
小課題3.胎盤組織中に存在するウシPRP1切断酵素の同定と酵素遺伝子の発現プロファイリング 昨年度までの研究からウシPRP1がカテプシンやマトリックスメタロプロテイナーゼ等で切断を受ける事を明らかにしたので、今年度はこれらの酵素が広くプロラクチンファミリータンパク質を切断する活性があるか否かを検証し、切断産物の生物活性を検証した。研究室で既に作成した組換えウシ胎盤性ラクトジェンを試料として、カテプシンで組換えウシ胎盤性ラクトジェンを消化したところ、カテプシンはウシ胎盤性ラクトジェンを切断する活性がある事が示された。またマトリックスメタロプロテイナーゼ8および13にも同様の切断活性が認められた。マトリックスメタロプロテイナーゼ13で切断されたウシ胎盤性ラクトジェン断片は、ウシ血管内皮細胞の増殖を促進したので、酵素切断に拠って生じたN末端断片は、血管新生に促進的に作用している事が示唆された。 小課題4.22kDaのウシPRP1断片の血管内皮細胞の増殖活性に及ぼす影響の解明 22kDaのウシPRP1短鎖断片とツツジPRP1の組換えタンパク質の作成 ヒツジPRP1の組換えタンパク質を大腸菌の系で発現させた。ヒツジPRP1の成熟タンパク質をコードするcDNA配列を発現ベクターに組み込んでもタンパク質の発現は認められなかったが、N末端側の20塩基配列を大腸菌の利用性の高いコドンに変換する事でタンパク質を発現させた。組換えタンパク質を抗原として抗ヒツジPRP1の抗体をウサギで作成し、この抗体がヒツジPRP1を認識する事を確認した。ウシPRP1短鎖断片をコードする配列を発現ベクターに組み込んでもタンパク質の発現がみられなかったので、ウジPRLをモデルとして、完全長をN末端側短鎖配列の組換え発現を試み、コドン改変に拠って完全長と短鎖のPRLタンパク質を大腸菌の系で発現させる事が出来た。今後この方法を用いて、短鎖PRP1の組換えタンパク質を作成する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、胎盤性プロラクチンファミリータンパク質の酵素切断を実証し、PRP1と胎盤性ラクトジェンについては、切断断片の血管内皮細胞増殖に及ぼす影響を明らかにした。これは予定通りの進捗である。研究サンプルの作成も概ね順調に推移し、昨年度までは組換え発現がうまく出来なかったN末端側短鎖断片に着いても、コドン改変によって発現が可能になっている。また、ヒツジPRP1の抗体も作成し、研究マテリアルの整備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、酵素切断を受けた、胎盤性ラクトジェンやPRP1は共に血管内皮細胞を増殖させる活性を示した。この成績は、これまで下垂体性プロラクチンがカテプシンで切断された生じるN末端断片は血管内皮細胞の増殖を抑制するという既報と反対の成績である。この違いが何によって生じているのか?、下垂体性のプロラクチンと胎盤性ラクトジェンは共にラクトジェニック活性を示すにも関わらず、酵素切断を受けた断片(切断部位もほぼ同じと推察されるにもかかわらず)が血管内皮細胞の増殖に対して正反対の作用を示す機構を明らかにしてゆく必要がある。
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