研究概要 |
ラットを6,12,18,24時間10%低酸素環境に暴露の後、頚動脈小体を採材してノルアドレナリン合成酵素であるドパミンβ水酸化酵素(DBH)の主細胞における発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、12時間低酸素暴露群ではDBH強陽性を示す主細胞の数は増加し、18時間以降は個体によってDBH陽性の主細胞が増加するもの、コントロールと著変のない個体が認められた。また、DBH陽性神経線維の数および免疫反応は変化が認められなかった。一方で、半身プレシスモグラフ法により、ウレタン麻酔下で低酸素持続暴露(4時間)による呼吸変化を検討した。コントロールでは分時換気量(VE)は0.053L/min、呼吸数(RR)は175breath/minであった。低酸素暴露によって10分後にVEは0.066L/min、呼吸数は189breath/minに増加したが、4時間の持続暴露中VEは0.055-0.073L/min、RRは82-189breath/minと変動し、不定期(3~5回程度)に平常時に近い値に変化した。頚動脈小体で増加するDBHはノルアドレナリン合成亢進を反映していると考えられ、低酸素暴露中に生じる呼吸活動の平常値への変化はノルアドレナリンによる感覚神経の抑制に一因があると予測された。一方で、12時間以降では個体によっては低酸素に対する適応反応が進み、DBHの発現が不安定になっている可能性が考えられた。さらに、高血圧自然発症ラット(SHR/izm)の頚動脈小体におけるDBH陽性反応を検討し、コントロールのWKY/izmに比べてDBH陽性細胞が多く、神経線維は少ないことがわかった。以上の結果を考え合わせると、低酸素による頚動脈洞枝の活性をノルアドレナリンによってフィードバック抑制している可能性が高い。
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