研究課題/領域番号 |
22580330
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山本 欣郎 岩手大学, 農学部, 教授 (10252123)
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研究分担者 |
木崎 景一郎 岩手大学, 農学部, 准教授 (40337994)
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キーワード | 頚動脈小体 / シグナル伝達 / ノルアドレナリン / 低酸素 / 免疫組織化学 / 解剖学 / 生理学 / 獣医学 |
研究概要 |
本年度は、カテコラミンが低酸素環境による呼吸変化にどのように関与するかを調べるために、低酸素、高二酸化炭素、低酸素および高二酸化炭素の混合ガスによる呼吸変化と中枢神経系のFos発現の変化を検索した。材料としてWistarラット(オス、8週齢)を用い、呼吸測定にはヘッドアウトプレチスモグラフ法を用いた。低酸素(10%0_2)、高二酸化炭素(10%CO_2)、混合ガス(10%0_2-10%CO_2)に2時間暴露し、分時換気回数および平均1回換気量を測定し、分時換気量を計算した。また、三種のガスに暴露したラットから脳を採材し、免疫組織化学法により呼吸関連核におけるFos発現細胞の数を計測した。実験の結果、呼吸測定では低酸素暴露において分時換気回数が増加し、高二酸化炭素暴露および混合ガス暴露では平均1回換気量が増加した。Fos発現は低酸素暴露ではケリカ-布施核(Kolliker-Fuse nucleus ; KF)、高二酸化炭素暴露では後台形核(retrotrapezoid nucleus ; RTN)に陽性細胞が増加した。混合ガス暴露ではKF、RTN共に陽性細胞が増加した。また低酸素暴露ではRTNには陽性細胞は認められなかったが、その近傍にあるC1領域(ノルアドレナリン作動性)に陽性細胞が認められた。これらの結果は、低酸素暴露において中枢のカテコラミン作動性神経が活性化されていることを示唆する。すなわち、低酸素暴露では高二酸化炭素や混合ガス暴露と異なり、中枢神経および末梢交感神経の両部位でカテコラミンによる呼吸調節が行なわれていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頚動脈小体におけるノルアドレナリンの作用について、研究到達目標である交感神経性の制御作用を明らかにすることに加えて中枢神経におけるカテコラミンが重要であるという可能性を示すことができた。一方で、当初の計画にある電気生理学的な解析がやや遅れているが、実験系のセットアップが概ね終了した。
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今後の研究の推進方策 |
頚動脈小体を支配する交感神経の作用をノルアドレナリン受容体分布の解析を通じて、血管支配と低酸素受容の両面から明らかにする。頚動脈小体にある交感神経の伝達物質のひとつとして、セロトニンが重要であることが明らかになりつつあるので、セロトニン作動性神経の分布様式と作用について検索する。また、これらに関しては電気生理学的な解析も検討する。一方で、中枢神経系における低酸素暴露とノルアドレナリン作動性神経の関係がわかってきた。そこで、トレーサー法を併用して低酸素に反応する脳内の呼吸調節回路と交感神経出力の関係に就いて、免疫組織化学的、電気生理学的に解析する。
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