研究概要 |
短期間の低酸素暴露によって,頚動脈小体の化学受容細胞がカテコラミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)およびドパミンβ水酸化酵素(DBH)の発現増強を示すという前年度までの成績を受けて,THのリン酸化がどのような挙動を示すかを検討した。ラットを6, 12, 18, 24時間10%低酸素環境に暴露の後,頚動脈小体を採材してSer31とSer40の部位でリン酸化されたTH(Ser31,Ser40)の主細胞における発現を免疫組織化学およびイムノブロッティングによって検討した。その結果,化学受容細胞におけるSer31とSer40リン酸化THの免疫反応性は,コントロール群に比べ6,12,18,および24時間暴露群において有意に増加した(p<0.05)。以上の結果から, 6時間の低酸素暴露によってラットCBのグロムス細胞のTHはSer31とSer40の部位でリン酸化が増強することを明らかにした。これは、THの新規合成に先立って酵素が活性化することを示しており、暴露初期段階では既に存在するTHによって合成されるドーパミンによって化学受容機能を調整していることを示唆している。また、免疫組織化学により頚動脈小体にはセロトニン調節系も関与していることが明らかになった。さらに、電気生理学的に低酸素暴露による交感神経活動が変化するかを検討した。頸部交感神経幹を双極白金電極に載せ、ラットに30分間低酸素暴露した。低酸素暴露後5分程度で同神経の発火頻度は増加し、通常気に戻すと元の状態に戻った。本研究によって、低酸素環境の初期段階における適切な呼吸反射は、頚動脈小体のカテコラミン、延髄のA1/C1カテコラミン作動性ニューロン群、交感神経等が関与している可能性が示された。
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