研究課題
本研究はCYP1Ainducerの肝発がんプロモーションにおける活性酸素種(ROS)ないし酸化ストレスの関与の解明を目的とし、米国でサプリメントとして使用されるインドール-3-カルビノール(I3C)及び胃酸分泌抑制剤オメプラゾール(OME)を用いて、ラット肝二段階発がんモデルでの解析を行った。I3C:I3C投与により、前がん病変マーカーのGST-P陽性巣が用量依存的に増加し、ミクロソームでの活性酸素、過酸化脂質(TBARS)、さらには酸化型DNAである8-OHdGの増加がみられた。網羅的遺伝子解析では、Cypla1と共にCyp1a2,Cyp1b1が増加し、芳香族炭化水素受容体AhRによる誘導が認められた。活性酸素除去に関与する第二相酵素遺伝子群の増加も認められたが、TBARS及び8-OHdGの増加がみられていることから、異常な酸化ストレスの増大が示唆された。また、細胞増殖や遺伝子損傷を示唆する知見もみられたことから、I3Cによる酸化ストレスの多岐にわたる影響が考えられた。以上の内容は、国際誌Toxicologyに掲載受理されている。OME:ラット肝二段階発がんモデルを用いて、OMEの発がんプロモーション作用の有無及びその作用機序を解析した。その結果、OME 276mg/kg投与群で、GST-P陽性巣の増加が認められ、OMEがプロモーション作用を持つことが明らかになった。マイクロアレイ解析及びReal-time RT-PCR解析では、Ahr gene batteryであるCyp1a1、Cyp1a2、Ugt1a6及びNF-E2-related factor 2に制御されるGstm1,、Gpx2等の発現増加が認められ、脂質過酸化の指標であるTBARS測定においても有意な増加が認められたことから、そのプロモーション機序には酸化ストレスの関与が考えられた。しかし、ミクロソームROSが減少し、8-OHdG測定においても変化が認められず、ミクロソームを発生源としたROSは関与しない可能性が示唆された。本検討では、Mycの増加が認められ、Raf-1、MEK2の増加が認められたことから、OPZは脚キナーゼを介して細胞増殖活性を高め、その結果として肝腫瘍プロモーションに関与した可能性が示唆された。
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Toxicology
巻: 未定