CYP1A誘導と腫瘍プロモーション作用との関係をより明確に示すため、 ラット二段階発がんモデルを用いて、0、0.25、0.5ないし1.0%のインドール-3-カルビノール(I3C)を9週間混餌投与した。GST-P陽性巣の発生率は、濃度依存的に増加し、Cyp1a1の誘導作用も増加し、Nrf2-gene batteriesの誘導が生じた。過酸化脂質の指標であるTBARSや酸化DNAマーカーである8-OhdGの増加が認められた。これらの成績は、I3CはCYP1Aに起因した酸化ストレスを引き起こしていることを示唆するものである。 次に、酸化ストレスの亢進による肝腫瘍プロモーション作用を検討するため、I3C投与に加えて抗酸化物質を併用投与した場合の影響を検討した。抗酸化物質としてはN-acetyl-L-cystein(NAC)を使用した。I3Cは0.5%の混餌投与で、NACは0.3%の飲水投与とした。併用投与の結果、GST-P陽性細胞巣がI3C単独群に比較し減少した。real time RT-PCR解析ではCyp1a1の発現量に有意差は認められず、ミクロソーム画分のROS産生においても変化はみられなかった。しかし、Nqo1、Gpx2およびMe1はNACの投与により減少したことから、NAC投与によりROSが捕捉され、減少したことが示唆された。 以上の成績より、I3Cには肝腫瘍プロモーション作用があることが示され、その機序としては、ROS産生により酸化ストレスが生じ、その結果としてシグナルカスケードの活性化、過酸化脂質の発生、DNAの酸化損傷が惹起され、肝腫瘍プロモーション作用が誘発されることが推測された。一方、NACはI3Cの肝腫瘍プロモーション作用を抑制したが、その抑制作用にはシグナルカスケードに対してI3Cが抑制的に作用するものと考えられた。
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