卵母細胞は、卵巣内で発育してから受精に至るまでの間に減数分裂の停止と再開をくりかえす。しかし、その制御機構の全貌は十分に解明されていない。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は、特異的レセプターであるNPRBを介して作用する局所因子である。昨年度、CNPが卵母細胞の減数分裂の停止維持に重要な役割を担うことを明らかにした。本年度は、CNPがLH上サージによる減数分裂の再開の過程へ関与するか検討を行った。 まず、培養条件下の胞状卵胞におけるCNPの減数分裂抑制効果について解析をおこなった。胞状卵胞の卵母細胞は、LHを作用させることで卵母細胞の減数分裂は再開したが、CNPによる前処理を行った場合、LHを作用させても減数分裂は再開しなかった。次に、マウス卵巣の排卵直前の卵胞において、hCG刺激によるCNPとNPRB遺伝子の発現パターンへの影響を調べた。FSH投与後48時間のマウス卵胞において、CNPとNPRB遺伝子は、それぞれ胞状卵胞の顆粒層細胞と卵丘細胞において強い発現が確認された。さらに、FSH投与に続いてhCGを投与し、2および4時間後における両遺伝子の発現を調べたところ、CNP遺伝子は、2時間後で明らかな発現量の減少が認められ、4時間後には大半の陽性シグナルが消失した。NPRB遺伝子の発現は、4時間後にわずかに減少した。さらに、リアルタイムPCRにより卵巣での発現解析をおこなったところ、CNP遺伝子の発現量は、2時間後で半分ほどになり、4時間後には2割以下に低下していることが明らかになった。 これらの結果より、CNP/NPR-Bシグナルは上LHサージを受けるまで卵母細胞の減数分裂の停止に作用し、LHサージに反応して発現量を低下させることで減数分裂再開を導くことが示唆された。
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