研究概要 |
プロテアーゼ活性化受容体(PAR)は、トリプシンなどのプロテアーゼによって受容体自身が持つリガンド部位が露出し、受容体自身に結合して活性化する。一方、粘膜上皮細胞の分化増殖の足場になる消化管筋線維芽細胞の,線維化過程におけるPARの役割は明らかとされていない。そこで,本研究では,消化管筋線維芽細胞におけるPARの役割と発現調節機構を,常在型マクロファージとの相互反応という観点から明らかにすることを目的とした。 1)炎症性刺激によるPAR発現の時間的・空間的変化 炎症に伴い増加するprostaglandin E2は細胞内cAMP濃度が増加することで,PAR2タンパク質発現量を変化させることなく,細胞膜のPAR2発現量が減少し細胞内発現量が増加した。そこで,より直接的にPAR2の空間的変化を確かめるため,Flag-PAR2を強制発現させた細胞の作成に着手し成功した。H24年度にその細胞を利用して空間的変化について更に検討する。 2)消化管筋線維芽細胞の機能に関する研究 消化管筋線維芽細胞に対するPAR2発現とその活性化の影響はこれまで検討されていなかった。我々は,単離初代培養筋線維芽細胞標本を用いてこの点について検討し,PAR1,2,3,4が発現していること,また,PAR2刺激によりこの遊走能が活性化されることを見出した。また,筋線維芽細胞の病態生理機能解析のために,スフィンゴシンによる遊走能変化についても検討し,スフィンゴシン受容体2を介して遊走能が抑制されていることを明らかとした。 3)マクロファージのLPS受容体のトリプシンによる変化 常在型マクロファージの機能に対する,PAR2活性化薬トリプシンの役割を検討した。・トリプシンはPAR2受容体を介することなく,正PS受容体活性化経路を抑制し,それはセリンープロテアーゼ機能に由来するCD14タンパク質の分解に寄ることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
筋線維芽細胞の研究をより簡便にするために,不死化細胞の樹立を行う。また,上皮細胞との相互作用についても検討し,炎症性刺激が上皮細胞に由来すること,また筋線維芽細胞からの刺激により,上皮細胞が影響を受けていることを明らかにする。
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