研究課題/領域番号 |
22580336
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
杉元 康志 鹿児島大学, 連合農学研究科, 教授 (10100736)
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研究分担者 |
松元 光春 鹿児島大学, 農学部, 教授 (30157383)
日下部 宜宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30253595)
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キーワード | リゾチーム / アミロイド線維 / アポトーシス / 遺伝子変異 / 芳香族アミノ酸 / 細胞毒性 / 小胞体 / コア領域 |
研究概要 |
高齢化社会となり、老化に伴う神経疾患は社会の深刻な問題となっている。それにはタンパク質の異常化が関係したものが多く、アルツハイマー病やパーキンス病などが代表的である。一方、生体の体液に広く分布するリゾチームは遺伝的な変異によりアミロイド線維となり全身に蓄積してアミロイドーシスを起こす。線維形成のメカニズムはタンパク分子内のコアと呼ばれる領域が関係していると指摘されているが詳細は分かっていない。また、線維が同様に細胞をはじめとする生体に影響するかについても不明な点が多く、未解決である。本研究はリゾチームの線維形成機構と毒性発現による細胞への影響を分子レベルで解決することを目的として進めている。23年度は特定した疎水性に富んだ9個のアミノ酸からなるコア領域の解析を進め、線維形成にはC末端の芳香族アミノ酸とペプチドの長さが重要であることが分かり、芳香族アミノ酸のスタッキングにより、線維が形成されることが分かった。これは他のアミロイド線維も適用でき、特定のアミノ酸のスタッキングが線維形成に関与し、組織に蓄積し、毒性を発揮すると考えられる。細胞内外でリゾチームアミロイド線維形成体を発現させ、毒性を調べた結果、細胞外でのアミロイド形成によって細胞に特異的なアポトーシスを誘導することが観察された。これは線維と細胞膜との相互作用により、イオンチャンネルの破綻によるものと推定された。細胞内でのアミロイド線維の影響では、線維は小胞体に蓄積し、それ以外の細胞器官には見られないことから分泌機能に異常が発生したと考えられ、それが原因で細胞増殖や細胞機能に影響が見られ、細胞の性質が変化することが分かった。アミロイド線維は細胞内外で生体に影響していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リゾチームをモデルとしてアミロイド線維形成機構の解明を行ったが、アミロイド線維形成に必須なコア領域の同定・解析を進め、アミノ酸の重要性を明らかにすることが出来た。タンパク質の線維化には通常表面には現れてない領域が何らかの原因で表面に露出することが関係する知見を提供できた。アミロイド線維の細胞毒性についてはアポトーシス誘導、細胞増殖低下、細胞内蓄積などの現象は明らかに出来たが、詳細な分子レベルでの説明はこれからである。イオンチャネルの破綻とアポトーシスとの関係、小胞体ストレスと細胞増殖停止の分子メカニズムは24年度に取り組む課題である。研究は順調に進行しており、当初の目的の達成に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞毒性については細胞の種類、アミロイド線維の状態によって毒性は大きく異なっている。よって、これらを整理して細胞毒性の傾向を分類することが重要と考える。ヒトリゾチーム変異体は酵母かカイコ・バキュロ系でタンパクを採取しているが発現量に差があり、分析できる量を確保することが最優先される。24年度は組換え体ベクターのさらなる構築に向けて、タンパクの解析が出来る体制を整えていく。それにより、アミロイド線維形成機構と細胞毒性の課題解決が大いに遂行できる。
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