研究概要 |
α2,3-シアル酸転移酵素遺伝子欠損マウスは,てんかん刺激に非応答であり,てんかん発作を発症しない。そこでこの遺伝子欠損マウス脳から,てんかん発症に関わるシアル酸化分子を同定することを目指した。これまで,レクチン組織化学法とレクチン沈降法により,10種のレクチン(MAA, MAM, ECA, SNA, ABA, PNA, BPA, WGA, AAL, EEL)を用いて,ST3Gal IV-KOマウス脳と野生型マウス脳間における,糖たんぱく質のレクチン親和性の違いをレクチン組織化学法によりスクリーニングした結果,ABA (Agaricus bisporus, mushroom),とPNA (Arachis hypogaea, peanut)の間に違いが観察された。そこで本研究では,違いが見られたバンドが含む糖たんぱく質の同定をレクチン沈降法により試みた。その結果,脳特異的スペクトリンがKOマウス特異的に検出された。しかしながら,脳特異的スペクトリン抗体を用いた免疫沈降法を実施したところ,KOマウスと野生型間で分子量の差及び量に差は見られなかった。一方で,幾つかのチャネル受容体抗体を用いたウエスタンブロッティングにより,KOマウスと野生型脳を比較したところ,ナトリウムチャネルαサブユニット量が,KOマウスで著しく亢進した。一方で,KOマウスと野生型脳から調整したTritonX-100膜画分を用いた免疫沈降を実施したところ,ナトリウムチャネルαサブユニット量に差が見られなかったことから,ナトリウムチャネルの局在の変化が示唆された。次年度は,ナトリウムチャネルの局在の差を明らかにすると共に,新たなシアル酸化分子同定系を立ち上げる予定である。
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