ネオスポラ症は、細胞内寄生原虫Neospora caninumの感染に起因する届出伝染病で、本症で問題となるのは終宿主の犬科動物と中間宿主の牛である。発症を起因する原虫ステージは中間宿主上のタキゾイトとブラディゾイトで、その伝播様式は垂直感染が主体となるが、本症に対する治療法および予防法は未確立のままである。本研究の目的は、本症予防ワクチンの開発を念頭に、タキゾイトーブラディゾイトのステージ特異的蛍光発色原虫を作製し、本症における水平感染後ならびに垂直感染時での原虫のステージ変換の動向ならびに誘因を特定し、妊娠時における対原虫免疫への基礎的知見の取得と、予防ワクチンの方向性の決定を行うことである。 平成22年度には以下の研究を行った。(1)蛍光発色原虫の作製:N.caninum由来DHFR遺伝子によるピリメタミンを薬剤選択用マーカーとして、タキゾイトステージには緑色蛍光蛋白GFP遺伝子を、ブラディゾイトステージには赤色蛍光蛋白tdTomato遺伝子を用いてステージ特異的発色プラスミドを構築した。さらに本プラスミドをN.caninum Nc-1株に遺伝子導入しステージ特異的蛍光発色原虫の作出に成功した。 (2)蛍光発色原虫のin vitroとin vivoでの検証:二重蛍光発色プラスミド導入原虫のタキゾイトをVero細胞に感染させ、培養液中にSNPを加えることでブラディゾイトへと分化誘導させた。SNP添加前の原虫は細胞の細胞質に緑色蛍光を発色して観察され、SNP添加後には赤色蛍光を発色する原虫の割合が増加し、SNPによるステージ変換がin vitroで確認された。次に本原虫タキゾイトをマウスの腹腔内に接種し、3週後に脳内の原虫を蛍光顕微鏡にて観察を行った。その結果、脳内には赤色発光するブラディゾイトのみが観察され、in vivo"においても原虫のステージ変換を確認することができた。
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