研究課題/領域番号 |
22580342
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
池 和憲 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50159597)
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研究分担者 |
今井 壮一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (90120758)
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キーワード | Neospora caninum / ネオスポラ症 / 垂直感染 / 蛍光発色原虫 / ワクチン |
研究概要 |
ネオスポラ症は、細胞内寄生原虫Neospora caninumの感染に起因する届出伝染病で、本症で問題となるのは終宿主の犬科動物と中間宿主の牛である。発症を起因する原虫ステージは中間宿主上のタキゾイトとブラディゾイトで、その伝播様式は垂直感染が主体となるが、本症に対する治療法および予防法は未確立のままである。本研究の目的は、本症予防ワクチンの開発を念頭に、タキゾイトーブラディゾイトのステージ特異的蛍光発色原虫を作製し、本症における水平感染後ならびに垂直感染時での原虫のステージ変換の動向ならびに誘因を特定し、妊娠時における対原虫免疫への基礎的知見の取得と、予防ワクチンの方向性の決定を行うことである。 平成23年度には以下の研究を行った。(1)水平感染を受けた親からの垂直感染マウスモデルの検討:妊娠-1,0,1,2週後にN.caninum 1.3×10^7/headの感染を受けたマウスからの妊娠率、産仔数、産仔からの原虫遺伝子の検出を試みたところ、妊娠-1>0>1=2週感染の順に垂直感染を起こしていることが判明した。(2)慢性感染からの垂直感染マウスモデルの検討:N.caninum感染(1×10^7/head)後1,3,6≦ヶ月のマウスからの産仔数、産仔からの原虫遺伝子の検出の検討を行った結果、6ヶ月≦のマウスが最も垂直感染を起こしたいたが、その間には有意な差は認められなかった。従って、本モデルにおける試験には感染後1ヶ月以上のマウスを用いるのがよいことが判明した。(3)N.caninum感染マウスにおける抗体価からみた妊娠の影響:各種タキゾイトおよびブラディゾイト由来抗原を用いたELISA法にてN.caninum感染後、妊娠、不妊娠、未交配マウスについて経時的(毎週)に採血を行い、これら複数の抗原に対する抗体の消長を網羅的に検討を行うべく、現在試験を継続中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究については(1)当初の計画以上に進展しているものと、(3)やや遅れている、ものがあり、(2)のおおむね順調に進展しているとした。(1)当初の計画以上に進展しているものは、ワクチン抗原の候補となる抗原の遺伝子クローニングならびに蛋白発現であり、有効な抗体調査の後には直ちにワクチン試験を行える状況になっている。(3)やや遅れているものは、妊娠中のホルモンによる妊娠免疫の検討であり、現在入手可能なマウスのホルモンを検索中であり、入手もしくは定量試験確定後、試験に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
N.caninum感染マウスにおける抗体価からみた妊娠の影響の試験の結果から、ワクチン候補抗原を選択し、プロトタイプのワクチンを作製する。さらに慢性感染からの垂直感染マウスモデルの検討からN.caninumNc-1/VSC株(蛍光原虫)を感染させ、1ヶ月以上経過したマウスにワクチンを接種し、抗体が検出された後(約1ヶ月)、交配後、その産仔に対して産仔数、産仔からの原虫の可視化ならびにPCRによる原虫遺伝子を検出することで、ワクチンの効果を検証する。 妊娠時におけるホルモン、ワクチン、原虫の感染によるTh1/Th2免疫のバランスを検証し、免疫状態の変化による妊娠の影響を検証する。
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