ネオスポラ症は、N. caninumの感染により、牛の死・流産ならびに子犬の神経・筋症状などを呈する疾病で、本症伝播で問題となるのは、①非妊娠時の原虫感染による宿主体内での増殖と分布、②妊娠時の原虫感染および妊娠等の刺激によるシスト内原虫の再活性による垂直伝播、である。本年度はマウスモデルにおけるN. caninumタキゾイトおよびブラディゾイト由来抗原の①水平伝播および②垂直伝播に関する効果の検証を行った。 タキゾイト由来抗原として組換え(r)NcSAG1、ブラディゾイト由来抗原としてrNcBAG1を供試し、各々単独および混合したものにTh1型免疫誘導性のO/W型オイルアジュバントを添加したものを免疫原とした。GSTタグ蛋白添加オイルアジュバントおよびPBS単独投与をそれぞれアジュバントおよび感染対照とした。①水平感染モデルの評価は抗体産生能は各種抗原を用いたELISA、防御評価は脳内蛍光発色原虫数の定量的PCRの測定値で行った。②垂直感染モデルの評価は各群マウスからの産仔数、仔マウス体内の蛍光発色原虫分布によって行った。 ①アジュバントおよび感染対照と比較して、タキゾイト由来抗原rNcSAG1とブラディゾイト由来抗原rNcBAG1の免疫は共に脳内原虫数を低下させた。さらにrNcSAG1とrNcBAG1を混合したものでは、それぞれ単独の場合に比べ、原虫数をより低下させ、相乗効果が確認された。②のモデルでは対照群に比べ、何れの試験群でも新生仔マウス数および仔マウスにおける体内原虫分布においても差を認めることができなかった。 これらの結果は抗原特異的なTh1型は水平感染モデルでは有効であるが、体内免疫がTh2型に傾く妊娠免疫時にはTh1型誘導免疫は効果がないことを示唆された。
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