研究課題
Melissococcus plutoniusはミツバチの健康を脅かすヨーロッパ腐蛆病の原因菌である。本菌の培養にはカリウム塩を添加した低Na+高K+培地が必要であり、高Na+低K+培地には発育しないとされている。しかし、我が国には高Na+低K+培地にも発育するM. plutonius株(非典型株)が存在することが明らかとなったため、本課題では「M. plutonius非典型株の高Na+低K+培地での増殖を可能にした遺伝的背景を特定し、その情報を正確なヨーロッパ腐蛆病診断に役立てること」を目的として研究を行った。最終年度では、これまでの研究の結果見つかったNa+排出ポンプ遺伝子の変異が典型株におけるカリウム塩要求性に関与していることを証明するため、活性型のcation-transporting ATPase遺伝子またはNa+/H+ antiporter遺伝子を野外で分離された典型株に導入し、高Na+低K+培地でも発育することを確認した。期間全体を通じた研究の結果、国内のM. plutonius株には、Na+排出ポンプ遺伝子が不活化されている典型株と正常な非典型株が存在することが明らかになった。通常、生物は細胞内を低Na+高K+に維持することで正常な生命活動を行っている。Na+排出ポンプは細胞内から細胞外にNa+を排出することで、細胞内を低Na+高K+状態を維持していると推測されている。そのため、Na+をくみ出せない典型株はカリウム塩を多量に添加した低Na+高K+培地内でのみ、自らの細胞内を低Na+高K+濃度に維持でき、増殖できるのだろうと考えられる。以上の結果から、日本国内には上記の様な遺伝的背景の違いから、カリウム塩要求性の異なる M. plutonius株が存在していることが明らかとなり、より正確なヨーロッパ腐蛆病の診断に貢献する重要な知見となった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied and Environmental Microbiology
巻: (印刷中)
DOI:10.1128/JB.05151-11
Journal of Invertebrate Pathology
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Journal of Bacteriology
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