これまでの研究によって、比内地鶏鶏肉は、ブロイラーと比べて長鎖不飽和脂肪酸の一つであるアラキドン酸を多く含み、アラキドン酸は鶏肉の「おいしさ」と関連していることが明らかになっている。しかしながら、なぜ比内地鶏鶏肉はアラキドン酸含量が多いのか、その分子遺伝学的な背景が、いまだに解明されていない。そこで22年度は、鶏肉のアラキドン酸含量を制御する遺伝子の一つであるデルタ6デサチュラーゼ遺伝子の5'上流領域の塩基配列を決定した。その結果、同領域内のプロモーター配列と推測される部位に、新規の一塩基多型(SNP)を発見した。また、同SNPの存在によって生ずるかもしれないプロモーター活性の違いを検出するため、デルタ6デサチュラーゼ遺伝子の5'上流領域を、PCR増幅後、ルシフェラーゼ発現ベクターに分子クローニングした。23年度以降、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイによって、SNPによる発現量の違いを測定することとしている。さらに、同SNPの品種・系統による出現頻度の違いを明らかにするため、ミスマッチ増幅変異分析法(Mismatch Amplification Mutation Assay、MANA)を開発し、同SNPの効率的かつ安価な検出が可能となった。23年度以降、我が国の肉用鶏生産に関わる鶏品種・系統における、デルタ6デサチュラーゼ遺伝子のSNPの各アリル頻度を明らかにすることとしている。
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