本研究では、睡眠覚醒調節機構の解明に向けて神経・免疫系が果たす役割に関してその機構を明らかにすることを目的として実験を行った。本年度は、正常な週齢の異なるマウスを使用して脳波を実際に記録解析し睡眠への影響を検討した結果、加齢が進むにつれて覚醒時間やレム睡眠時間の減少とノンレム睡眠時間の増加、および睡眠の分断化等の生じていることが明らかになった。このことは、加齢により睡眠覚醒調節機構に何らかの変化が生じていることを示唆するものであると考えられた。また、若齢マウスでは、明瞭な体温と活動量の日内変動が認められその振幅も大きいのに対して、老齢マウスにおいてはその傾向が弱くなってきておりその変化量も小さいことが明らかとなった。このように、脳波を含めた生体現象を解析することにより加齢が睡眠の質や体温・活動のリズムに影響を及ぼすことが明確に示された。一方、自律神経系機能との関連性を明らかにするために、心電図の長時間記録を行い、これまでに確立し様々な研究に応用してきた心拍変動のパワースペクトル解析を行った。パワースペクトルの高周波数成分(HF)と低周波数成分(LF)について解析し、副交感神経系機能の指標となるHFパワーと自律神経系バランスの指標であるLF/HF比の変化から、睡眠覚醒状態や体温変化に対する自律神経系機能の変化との相関性が明らかになってきた。今後、この点に関しては更に詳細な実験を行い、よりその関連性について検討する予定である。
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