研究課題/領域番号 |
22580349
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏 山口大学, 農学部, 教授 (90211945)
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研究分担者 |
長谷川 英男 大分大学, 医学部, 教授 (00126442)
横山 真弓 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50344388)
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キーワード | 美麗食道虫 / 遺伝子型 / 宿主特異性 / 牛 / シカ / サル / rDNA / COI |
研究概要 |
本研究は、広域な哺乳動物の食道上皮内寄生線虫である美麗食道虫(Gongylonema pulchrum)を解析モデルとして、「宿主特異性」あるいは「自然伝播」を規定する要因を明らかにすることを目的として実施している。本年は、ウシならびにシカといった反芻類、イノシシ、ニホンザル、動物園リスザルなどの異なる宿主に寄生する美麗食道虫について、リボソームRNA遺伝子(rDNA)ならびにミトコンドリアDNAのCOI領域に注目し、宿主由来とそれから分離される美麗食道虫の遺伝子型について検討した。ウシとシカについては、地域差について検討するために全国的な材料収集とした。rDNAについては18S~28Sにかけた6,100塩基対をそれぞれの動物種に寄生する美麗食道虫で明らかにし、ITS1ならびにITS2領域に変異が頻発することを確認するとともに、更に、これらの2領域を中心に異なる宿主由来をもつ虫体の遺伝子型の解析を進めた。この解析から、ウシ型(ウシ、動物園リスザル、外来動物キョン)とシカ型(シカ、イノシシ、ニホンザル)が区別された。ミトコンドリアDNAのCOI領域の解析から、ウシ型2タイプ(ウシ、リスザル)、シカ型8タイプ(シカ、イノシシ、ニホンザル)が確認された。以上の結果は、自然環境下では、家畜(ウシ)と野生動物(シカ、イノシシ、ニホンザル)との間で同一遺伝子型の美麗食道虫の感染環の共有がないことを広汎な材料収集を通して示している。また、ネパールの水牛に寄生する美麗食道虫について同様の検討を行ったところ、国内各種動物およびイラン産ウシに寄生する美麗食道虫とはかなり異なる、固有の遺伝子型をもつことが確認された。なお、形態学的な種鑑別は従来の基準に依る限りにおいて不可能であった。以上のそれぞれの遺伝子型の自然界分布(動物種分布)の偏りについて、科学的な説明を行うべく、中間宿主となる食糞甲虫の動物糞嗜好性について検討するとともに、異なる動物種食道上皮への侵入性評価を実験室解析を通して明らかにする予定である。
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