日本産ブユをDNA配列で同定するためのデータベースを構築することが本課題の目的である。日本産ブユはこれまで74種が記載されており、そのうち50種についてミトコンドリアのcytochrome c oxidase subunit I (COI)とsubunit II (COII)の全塩基配列と16S rRNAの一部の領域の塩基配列を決定した。これらのCOIとCOIIの配列ではほとんどの種間で十分な変異量があった。しかし、Nevermannia亜属vernum種グループのSimulium uchidai、S. ibarakiense、S. rebunense、S. uemotoiについては配列が類似していた。またProsimulium yezoenseとP. apoinaについても配列にあまり差がなかった。これらの種に関しては種の再定義が必要になる可能性がある。今後、塩基配列での種の同定の精度を高めるには、各種について種内変異を調べなければならない。COIのプライマーセット (C1-J-2195とTL2-N-3014)は全ての種において安定してPCR増幅し塩基配列の決定が行なえることから、この領域は種内変異を調べる領域として有効である。また他の昆虫種のバーコードプロジェクトで利用されているプライマーセット (LCO1490-HCO2198)でも同じく有効であることを確認した。さらに、今回作成したデータをもとに日本のブユ種と海外の種の関係も明らかにしていく。
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