研究概要 |
本研究は、乳腺感染の効果的な制御を目標に、乳腺感染の病態を把握するとともに修飾物質としての乳酸菌およびその産物としてのバクテリオシンの乳腺内投与による乳腺内への白血球誘導とその機能増強による乳腺感染の制御を意図したものである。 乳腺感染牛および正常泌乳牛の白血球機能および細胞情報伝達系の解析を実施するとともに有用微生物に対する乳腺の反応性を検討した。黄色ブドウ球菌に自然感染した乳房炎牛の血液および乳腺中の白血球機能および関連遺伝子の発現解析から、乳中好中球のL-セレクチンおよびCD18発現は血液のそれらに比較して有意に低下していた。またリンパ球の表面抗原であるCD4,CD8の発現は感染分房のそれらは正常ならびに血液のそれらに比較して増加していた。感染牛の血好中球の活性酸素生成(O_2-)能およびリンパ球の幼若化反応の低下が認められた。血液および乳中からの分離白血球のサイトカイン関連遺伝子の発現:インターロイキン(IL)1-β,腫瘍壊死因子(TNF-α),IL-6,IL-8,IL-12のmRNAの増加が検出された。これらの成績から黄色ブドウ球菌による乳房炎牛では免疫抑制的な面と防御対応型の反応が進行している可能性が示唆された。また有用な修飾物質としての乳酸菌の施用条件、乳腺への施用に伴う白血球反応および感染防御の把握を目的として正常および潜在性乳房炎分房へ調整乳酸菌(食品グレード)を注入し経時的に体細胞の誘導に伴う異物排除能が認められたことから白血球機能の増強が示唆された。
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