研究概要 |
有用微生物の乳腺内注入で誘起される乳腺内の体細胞の反応性および感染分房に対する微生物排除能を検討し下記の成績を得た。また関連で乳環境の制御について予備試験を行った。 1.乳酸菌(LAB)注入により誘導された乳体細胞のサイトカインmRNA発現 LAB注入に伴う分房乳の体細胞に発現する炎症性およびTh1&Th2サイトカインならびに核内調節遺伝子NF-κBのmRNA発現を注入前および注入後1、6日の動態を検討した。LAB注入後1日で増加したサイトカインmRNAは,IL-1β,IL-8,TNFα,IFNγ,IL4,IL6であり、6日後ではIL8,TNFα,IFNγ,IL4およびIL6はさらに増加した。NF-κBのmRNAも6日で増高した。これらの結果からLAB注入により乳腺の免疫系が刺激され免疫機能の活性化が招来されることが認められた。 2.感染乳腺へのLAB注入による乳腺感染制御能の評価 潜在性乳房炎牛の微生物学的治癒に及ぼすLAB(B.breve)乳房内注入効果を検討した。治療効果は注入前の微生物学的正常値に比較して注入後14日の分房乳中の原因菌消失もしくは250CFU/ml以下を有効とした。CNS陰性ブドウ球菌群12分房のうち8分房で陰性となり微生物学的治癒率は67%、環境性連鎖球菌に対しては8分房のうち5分房が陰性となり治癒率は63%と良好であった。これらの結果から乳酸菌B.breveの影響は微生物種により異なることが明らかとなり、環境性乳房炎の原因菌排除効果が高いことから環境性乳房炎の制御における薬物(抗菌剤)治療に比肩しうる制御効果を有しているものと推察された。 乳腺内への乳酸菌の注入により活性の高い好中球・単球の乳腺内炎症部位への大量誘導とその機能活性の増高および宿主抵抗性に関与する諸要因・物質の増高により異物排除に相乗的な効果を招来させることが示唆された。
|