研究課題/領域番号 |
22580355
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
入交 眞巳 北里大学, 獣医学部, 講師 (70453511)
|
研究分担者 |
米澤 智洋 北里大学, 獣医学部, 講師 (10433715)
|
キーワード | アニマルウェルフェア / ブタ / ネコ / 環境 / PET / 脳糖代謝 |
研究概要 |
現在家畜生産の場で課題となっているアニマルウェルフェアを考慮した家畜生産を目指し、我々は、家畜のストレス軽減する事を目的として動物の安寧フェロモンを使用する事で家畜のストレス軽減が図れるか、家畜福祉への安寧フェロモンの利用の可能性と効果の検証を目的としていた。豚を用いて豚安寧フェロモンの効果とその生理学的影響を見たかったのであうが、豚の安寧フェロモン自体の入手困難、さらに脳の糖代謝測定が、技術的、法律の制限等の問題で測定できなかった。 本問題に対しては、豚のストレス軽減の方法の検討の1つとして、豚の環境を変えた際の生理学的、行動学的変化を調査した。その結果豚本来の行動を発現できるよう屋外簡易施設で豚を放牧飼育したら、豚の貧血が無く、免疫機能も高く、不安行動もなく、ストレスに対する生理的反応にも違いがあった。 安寧フェロモンのストレス緩和効果に関しては、豚ではなく、猫を用いた。不妊手術前後の動物病院ケージの中にいる猫に安寧フェロモンに暴露させた場合とさせない場合において、猫の行動の違いと見たところ、安寧フェロモンに暴露した猫の方が手術後によく動き、痛みが軽減されるほどストレス軽減があったのではないかと考えらる。 また、安寧フェロモンを暴露させた時の脳の糖代謝に関しては、安寧フェロモンの影響は今回認められなかった。 今回使用したPET(positron emission tomography)は画像解像度が脳を診るには低く、今後解像度の高い装置を用いる必要がある事が示唆された。 今年度の研究から動物のストレスを軽減する目的で安寧フェロモンの活用を考えたがフェロモン使用の前にまずは動物の飼育環境を見直してからプラスでフェロモンの使用を考えた方がより目的達成できると考えられる。動物の環境を変えず薬剤、サプリメント、フェロモンなどで簡単にストレスを下げるのは難しく、まずは動物の環境がより重要で畜産農家にも一番受け入れやすいと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべての実験は終了しており、本年度は予定通り論文として仕上げ、発表していく段階であるため、予定通りと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
予定通り本年度は結果をまとめて発表していくことを考えている。本研究は当初「安寧フェロモン」を使用して家畜のウェルフェアを推進していく試みとした研究であったが、研究を進める過程において、家畜の環境がストレスに大きな影響を与えている事、行動のみならず、生理学的にも予想を大きく上回るほど大きな影響を与えていた事が判明したため、今後「安寧フェロモン」や「薬剤」「サプリメント」などの添加物にたよらない方向のアニマルウェルフェアを考えた研究と畜産農家、消費者への啓発を考える方向の研究につなげていきたいと考える。また、「安寧フェロモン」は「痛み」の軽減に有効である可能性が今年度の研究で分かったため、「ストレス」だけに焦点を絞らないアプローチで「安寧フェロモン」に関して研究をすすめていきたい。
|