研究課題/領域番号 |
22580358
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠矢 幸伸 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20180119)
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キーワード | カリシウイルス / ブタ / 下痢 / ノロウイルス / サポウイルス / St-Valerian-like virus |
研究概要 |
本研究はカリシウイルス科に属するノロウイルスとサポウイルスを含むブタ腸管カリシウイルスの病原体としての性状解明を進展させることを目的とする。本年度は昨年度に検出された当該カリシウイルスの遺伝子解析を進めるとともに培養細胞での増殖を試みた。 方法:昨年度にRT-PCRで検出されたブタ腸管カリシウイルスであるサポウイルス10株とSt-Valerian-like virus1株のVP1遺伝子の塩基配列を決定し、系統発生学的関係を比較解析した。さらに、米国でブタサポウイルスの増殖に成功した報告のあるブタ腎由来株化細胞であるLLC-PK1細胞に胆汁酸塩を添加した系(Chan et al.,2004)を用いたウイルス増殖をRT-PCR陽性サンプル44検体について試みた。 結果と考察:サポウイルス10株のVP1遺伝子の塩基配列を決定したところ、6株は遺伝子型GIIIであり、3株はGVIであることが明らかとなり、残りの1株は新たな遺伝子型である可能性が示され、ブタ由来サポウイルスの遺伝的多様性が示唆された。St-Valerian-like virusのVP1遺伝子については欧米の株とアミノ酸配列で96.3%以上の相同性を有しており、異なる地域でも遺伝的に類似していることが示された。一方、培養細胞での増殖については今年度に追加で検出したサンプルも加えて検討を行ったが、明瞭なCPEおよびRT-PCRでのゲノムRNAの増加の確認は得られず、細胞培養での分離増殖にはさらなる検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度初めの段階で予算減額の可能性が示唆されたことに伴い、新たな実験材料とシステム構築が必要であったバキュロウイルスを用いた組換え発現系によるウイルス様粒子作成実験開始を延期したため、H23年度に行う予定であったウイルス様粒子作成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れているウイルス様粒子作成とそれを応用した血清診断法の開発および特異抗体の作成を優先して行う。また、先行論文で報告されているブタサポウイルスの培養細胞での増殖法は当該法を開発・報告した研究グループでも現在は再現が難しい状況との私信が得られたため、用いる細胞株の再検討などの抜本的な見直しを行っている。一方、病原性について全く不明のGIII以外のブタサポウイルスとSt-Valerian-like-virusを含む糞便材料が本研究により得られたため、新生豚を用いた感染実験も本研究計画の最終段階として推進すべく準備を進めている。
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