本研究はカリシウイルス科に属するノロウイルスとサポウイルス(SaV)を含むブタ腸管カリシウイルスの病原体としての性状解明を進展させることを目的とする。本年度は検出された当該カリシウイルスの遺伝子解析を進めるとともにウイルス様粒子の作出を試みた。 方法:昨年度までにRT-PCRで検出されたブタ腸管カリシウイルスであるSaVのVP1遺伝子についてさらに10株、計20株について塩基配列を決定し、系統発生学的関係を比較解析した。St-Valerian-like virus(SVV) 1株については全塩基配列の決定を終了した。さらに、バキュロウイルス組換え発現系を用いて、SVV及びSaV 3株についてVP1遺伝子の組換え発現によるVLP作出を行った。 結果と考察:SaV計20株のVP1遺伝子の塩基配列を決定したところ、10株はGenogroup III(GIII)であり、1株はGVIであることが明らかとなり、残りの8株は新たな2つのGenogroups(GVIII?、GIX?)を構成する可能性が示され、ブタ由来SaVの遺伝的多様性が明らかとなった。St-Valerian-like virusについてはゲノムレベルでもカナダおよびイタリアの株と89.5%~95.0%の相同性を有しており、異なる地域でも遺伝的に類似していることが示された。VP1発現によるVLPの作出では、電子顕微鏡観察において、それぞれ直径約40nmのVLPが観察され、その表面にはカリシウイルスの特徴であるカップ状構造が認められた。SVVやSaVなどの腸管カリシウイルスは細胞培養での増殖が困難であり、本研究で得られたVLPは血清反応用抗原など、今後の研究展開のツールとして有用と期待される。
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