研究概要 |
平成23年度は以下の研究成果を得た。 1.病理組織学的解析:腎生検により得られたイヌ4頭、猫1頭の腎臓を解析した。その結果、イヌでは膜性腎症と膜性増殖性糸球体腎炎が各々2例ずつであり、猫の1例は腎アミロイド症であった。特に、猫の腎アミロイド症はアミロイドが糸球体ではなく、間質に沈着するまれなタイプであった。 2.分子病理学的解析:TGF-β、PAI-IおよびACEの発現を解析するための基礎実験を行った。使用可能な抗体のリストアップが難航したが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)においてはイヌとネコの両方で使用可能な抗体を見出し、免疫染色による検出方も確立した。 3.レクチンを用いた解析:平成22年度の検索ではRCA-Iレクチンが糸球体毛細血管にheterogeneousな染色性を示すことを明らかになったため、本年度はこのRCA-Iレクチンが犬と猫の腎疾患における組織化学的機能マーカーになり得るのか検討を行った。その結果、犬では,様々な程度で糸球体毛細血管内皮にRCA-I陽性反応が観察され、その反応強度には尿細管円柱との関連が認められた。一方,猫では,糸球体毛細血管にRCA-I陽性反応は認められなかった。以上の結果から,犬の腎疾患においてRCA-Iが糸球体毛細血管の透過性亢進を反映する組織化学的マーカーになり得ると考えられた。 4.実験動物を用いた解析:片側尿管結紮モデルマウスを作製し、アスピリン、ピロキシカムおよびメロキシカム投与の影響を検索した。その結果、いずれの薬剤の投与も対照群に比べて腎病変を悪化させることはなかった。一方で、組織学的には明らかな改善も認められなかった。今後、更に詳細なメカニズムを解析する予定である。
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