平成24年度は以下の研究成果を得た。 1.病理組織学的解析:3頭犬の腎臓を新規に解析した(1頭は腎生検、2頭は死後直後のサンプリング)。2頭は膜性増殖性糸球体腎炎であり、1頭は腎異形性であった。腎異形性の犬種は家族性が疑われるため、現在、家系などを調査中である。 2.分子病理学的解析:22頭の犬および13頭の猫の腎臓について、アンジオテンシン変換酵素(ACE)およびACEのホモログであるACE2について免疫組織化学的に解析した。まず、正常な腎臓におけるACEとACE2の局在について検索を行なった。ACEとACE2は、ともに近位尿細管上皮の刷子縁に存在しており、犬と猫で大きな動物種差は認められなかった。ACE2は、犬猫ともに、遠位尿細管や集合管にも存在していた。腎疾患(慢性腎臓病)についてみると、ACEに対する陽性反応は減弱するケースが多かった。この傾向は、特に犬で顕著であった。ACE2では、近位尿細管よりも遠位尿細管や集合管で腎疾患による影響があり、染色性が強くなるケースが認められた。この傾向は、犬よりも猫で顕著であった。この結果から、犬と猫の腎疾患の発現・進行メカニズムにはACEとACE2の発現が関与しているが、それには動物種差が存在することが明らかになった。 3.実験動物を用いた解析:平成23年度の検索から、片側尿管結紮(UUO)モデルマウスで起きる尿細管間質障害に対してピロキシカムが抑制効果を示すことが明らかになっている。平成24年度の解析では、そのメカニズムを明らかにするために、線維化に関与する因子として、レニン、アンジオテンシンII、ベータ型変異増殖因子(TGF-β)、プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI)-1について免疫組織化学的解析を行なった。その結果、ピロキシカムはTGF-βの発現を抑制することで尿細管間質障害を抑制することが示唆された。
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