本研究では、動物に優しく(副作用が少ない)環境にも優しい(大気汚染がない)全身麻酔法の開発と普及を目指し、その最有力候補としてメデトミジン-リドカイン-ブトルファノール-プロポフォールの持続静脈内投与を用いた全静脈麻酔法(MLB-P-TIVA)の麻酔効果と安全性を実験的に検討した。本研究は、基礎的検討および臨床的検討で構成し、本年度は、基礎的検討として実験馬を用いてMLB-P-TIVAの麻酔効果、呼吸循環系への影響、中枢神経系への影響、および薬物動態を検討することを計画した。これらのうち、[1]馬におけるMLB-TIVAの麻酔効果の検討、[2]MLB-P-TIVAにおける馬の呼吸循環器系への影響、および[3]MLB-P-TIVAにおける調節呼吸と保定体位が馬の循環器系へ及ぼす影響について検討が終了し、7件の研究発表として国内外の学会で口頭発表した。 これらの検討の結果、馬のMLBP-TIVA麻酔は、倒馬後に一時的なパドリングがみられることに注意が必要であるが、円滑に外科手術を進めることができ、良好な麻酔回復を得られることから、馬の全身麻酔法として有用であると考えられた。また、調節呼吸によって換気と酸素化状態を劇的に改善でき、強い循環抑制が生じやすい仰臥位において調節呼吸を実施しても馬の循環機能をほぼ良好に維持することができた。馬のMLBP-TIVAにおいて調節呼吸によって引き起こされる循環抑制は許容範囲であり、MLBP-TIVAと調節呼吸による呼吸管理は馬の全身麻酔法として有用と結論された。
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