研究概要 |
【背景】ミニチュア・ダックスフントなどの軟骨異栄養犬種は椎間板疾患(IVDD)発生率が高い。近年、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)がIVDDの病態に関与し、血清中MMP-9量がIVDD罹患犬において非IVDD罹患犬よりも増加するとの報告がなされた。 【目的】IVDD発生時血清中MMP-9がIVDD罹患犬の予後因子となり得るか否かを検討するため、ベースとなるIVDDに罹患していない軟骨異栄養種犬のMMP-9活性を検討する。 【概要】非IVDD罹患ビーグル(n=11、年齢;1.6-8.6歳齢,体重;9.0-12.0kg)を対象とし、脳脊髄液、T10-L4までの髄核(n=54)を採材した。髄核は矢状断に等分し、一方はHE染色を行い、病理学的変化および構成細胞を評価した。他方はIV型コラーゲナーゼ測定キット(以下、測定キット)およびゼラチンザイモグラフィによりMMP-9活性を測定した。 【結果】組織所見:全髄核において軟骨変性が認められ、老齢犬(8歳齢以上)では石灰化も認められた。MMP産生細胞である炎症細胞の浸潤および自然退縮は認められなかった。MMP-9活性:測定キットでは、髄核:7.783unit/mL、血清:3.845unit/mL、脳脊髄液:0.417unit/mLであった。ザイモグラフィーでは、血清において活性型/潜在型MMP-9が検出され、髄核では潜在型MMP-9は明瞭に検出されたものの、活性型MMP-9は不明瞭にしか検出されなかった。 【考察】Levineらの報告(2006)では、非IVDD犬ではザイモグラフィーにより血清中MMP-9は検出されていなかった。Levineらの設定した対照群は非軟骨異栄養犬種であり、本研究結果との相違は犬種の設定によるものか、歯肉炎の有無といった他因子によるものか検討する必要がある。
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