研究課題/領域番号 |
22580367
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
上野 博史 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (70322881)
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キーワード | 犬 / 椎間板疾患 / 予後判定因子 / マトリクスメタロプロテイナーゼ / 歯周病 / 血清 / 歯肉 / ゼラチンザイモグラフィー |
研究概要 |
【背景】Levineらは、椎間板疾患(IVDD)罹患犬血清において有意にマトリクスメタロプロテイナーゼ (MMP)活性を認め、IVDDの予後評価因子として注目した。しかしながら、我々はIVDD非罹患ビーグル犬の血清中にMMP-9活性を認めた。さらにMMPが歯周病における組織破壊因子であることが近年報告されている。 【目的】IVDD非罹患ビーグル犬の血清および歯肉組織におけるMMP-2、9活性を検索し、歯周病が血清中のMMP活性に影響を及ぼすかを検討した。 【概要】ビーグル犬18頭(幼齢群6、若齢群5、高齢群7)を供試動物とした。若齢および高齢群ではCT装置によりIVDDおよび歯槽骨吸収の有無を検査した。また、全頭で歯周病の評価、血清のゼラチンザイモグラフィーを実施した。さらに高齢群では歯肉の組織学的評価、抗MMP-2、9抗体を用いた免疫染色、歯肉の破砕組織遠心上清のゼラチンザイモグラフィーを実施した。 【成績】歯周病の評価:幼齢群は全頭で正常な歯肉であった。若齢群1頭で初期の歯周炎、若齢群4頭、高齢群5頭で中程度の歯周炎、高齢群2頭で重度の歯周炎が認められた。CT検査:IVDDは認められなかった。若齢、高齢群において歯槽骨の吸収が認められた個体が存在した。ゼラチンザイモグラフィー:血清では、年齢に関わらず潜在型MMP-2、9、活性型MMP-9が検出された。活性型MMP-2は幼齢群のみに認められた。高齢群の歯肉上清では、潜在型MMP-2、9、活性型MMP-2が認められた。組織学的評価:高齢群の歯肉組織中に多数の炎症細胞浸潤を認めたが、MMP-2、9陽性細胞は少数であった。 【考察】中程度から重度の歯周炎に罹患した歯肉組織中に認められた活性型MMP-2が血清中に認められなかったことから慢性期歯周炎で発現するMMPは、血清中MMP活性に影響を与えないものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯周病が血清中MMP活性に影響を与えないことが明らかになったのは進展といえるが、椎間板疾患非罹患犬において、Levineらの報告と異なり血清中にMMPが認められた理由および背景を検討する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度の本課題において、我々は、本研究に使用した全ての椎間板疾患(IVDD)非罹患ビーグル犬の血清中において、ゼラチンザイモグラフィーにより潜在型MMP-2、9、活性型MMP-9を認めた。ビーグル犬は軟骨異栄養犬種であり、IVDDの好発犬種である。一方、Levineらが対照として使用した犬は軍用犬であり、軟骨異栄養犬種ではない。したがって、我々の研究とLevineらの研究との結果の違い(血清中MMP活性の有無)が、犬種によるものであるのか否かを検討する必要が生じた。もし、軟骨異栄養犬種のみで血清中にMMP活性が認められた場合には、血清中MMP活性をIVDDの予後判定因子として用いる事が困難となる。
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