まず、肝障害モデルとして免疫不全マウス(NOGマウス)を用いて骨髄移植の評価を行った。NOGマウスに四塩化炭素を投与し急性肝障害モデルマウスを作製し、蛍光色素標識(PKH26GL)した犬の骨髄細胞を投与し移植細胞の分布と肝機能の回復具体を評価した。その結果、移植細胞は主に肝臓への集簇が認められ、非肝障害モデルではその傾向は認められなかった。またごく少数ではあるが肺への集簇も認められた。犬移植細胞由来の遺伝子(SRY1)が検出され確実に肝臓への移植が認められたことが確認できた。 次に、治療効果を検討するために慢性肝障害(肝線維症モデル)のNOGマウスを作製し犬の骨髄細胞の移植を行った。しかしながら骨髄細胞投与群では非投与群に比べて線維化は進行し、その理由として異種間の移植による免疫拒絶反応が発生しているものと考えられ、今後は投与細胞の分画を詳細に検討する必要があると考えられた。 また、犬に対する骨髄細胞投与の影響を評価するため肝臓の部分切除を行った肝障害モデル動物犬を作製し骨髄移植を実施した。その結果、重篤な副作用等は認められず少なくとも急性障害はないものと考えられた。 最後に麻布大学付属動物病院に来院した重度の肝障害(肝繊維症)の症例に対して骨髄移植を実施した。明らかな治療効果については現在モニタリング中ではあるが、少なくとも重篤な副作用はなく治験を継続中である。
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