研究概要 |
複数重金属競合下でペプチド性リガンドであるフィトケラチン(PC)と非ペプチド性リガンド(有機酸・その他)に注目し、 (1)細胞質中のリガンド生成能、(2)液胞中の複合体形成能、(3)植物体中の複合体形成と輸送能の機構解明を目的として本研究を行い、以下の成果を得た: ① 重金属(Cd, Cu, Zn塩)及び砒酸塩を添加した液体培地にトマト植物体を移植し、各金属塩の組み合わせ条件で1~10日間栽培した。植物組織から細胞壁画分と可溶性画分に分けて各元素やリガンドを抽出定量した。その結果、Cuに較べZnとCdは地上部により多く輸送され、その地上部でのZnとCd濃度増加は有機酸とPC濃度の増加とそれぞれ相関があった。トマト植物体では砒酸(As)とホウ酸(B)処理ではPCは全く検出されなかった。また、BはAsの吸収輸送を阻害し、Cdの輸送を促進した。このように重金属輸送に有機酸、PCおよびホウ酸が関係することが示された。 ② 組織抽出液中の各種イオンやリガンドの変化をSephadex G-50とHPLCで分析した。その結果、重金属は低分子の有機酸、GSH・PCと結合して移動することが示唆された。なお、微量のため回収木部液と篩部液の分析には至らなかったが、時間追跡実験で重金属とリガンドとの大まかな移動速度を推定できた ③ 以上の成果を発展させ、さらに複合的重金属汚染環境を想定したモデル実験―塩集積植物アイスプラントを用いた水耕・土耕条件での根と葉面からの金属吸収、輸送に関する複合実験―を行った。その結果、二価の重金属と軽金属および一価のアルカリ金属類において、それぞれ異なる集積・分布および結合特性が明らかになった。トマトにおいてはセシウムの吸収と輸送蓄積に関する顕著な成果も得られた。 ④ 以上の研究成果を関連学会で発表し、論文や著書として公開することができた。
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