磯焼けの原因を明らかにするため、連続培養による海水評価系を構築し、アラメの成長から海水の質を評価することを目的とした。海水の質を決定する要因として最も重要なのが窒素とリン酸であるが、海水に含まれる有害物質の影響について検討するためには、窒素やリン酸などの主要な栄養塩類が成長の制限因子にならないようにする必要がある。そこで、まず、窒素、リン酸、鉄の濃度がアラメの成長に与える影響について検討し、その後、さまざまな場所で採水した海水の比較を行った。 アラメの配偶体を成熟させ、胞子体を発生させた後、通気培養したものを実験に用いた。個体識別のため、仮根部に色紙片を付けた5個体の藻体を1Lまたは2Lの連続培養用フラスコに入れ、培養液を1日あたり2L供給しながら通気培養した。培養液は、ろ過滅菌した海水に窒素(NaNO_3)、リン酸(NaH_2PO_4)、鉄(Fe-EDTA)をそれぞれ通常の培養液の1/8~0倍になるように加えたものを用いた。週に1回、藻体の写真を撮り、そこから葉状部の面積を求めることで成長を測定した。成長をゴンペルツ曲線に近似し、最大値パラメータとα_<50>(推定最大値の50%成長に要する期間)に基づき成長を評価した。 窒素およびリン酸については通常濃度の1/16倍以上、鉄については1/128倍以上で、十分な濃度であることがわかった。そこで、海水比較時には窒素とリン酸は1/16倍、鉄については1/32倍加えることにした。野母崎、三重漁港、国東半島北部、こしき島南島海域、市販されている小笠原沿岸の海水、市販されている人工海水の計6種類の海水を比較した結果、最も汚染の程度が高いと想定していた三重漁港の海水で培養した藻体の成長が最もよかった。ろ過滅菌によって有害物質が取り除かれてしまったか、無機窒素、リン酸、鉄以外の成長を促進する物質が影響している可能性がある。
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