アラメの連続培養系において、成長を評価するための指標を検討するとともに、磯焼けの原因の一つとして考えられる養殖用ペレットの影響について検討した。実験室で発生させた幼胞子体を2 Lの連続培養用フラスコに入れ、海水に硝酸塩、リン酸塩、鉄EDTAを添加した培養液を1日あたり2 L供給しながら培養した。異なる栄養条件における成長を比較するため、硝酸塩添加濃度は 0 ~ 140 μMにした。ペレットの影響を検討する際には、 0.2 ~ 1.6% ペレット懸濁液を1日あたり 60 mLの速度でフラスコに添加した。いずれの実験においても、 5 ~ 7 日ごとに各個体の写真を撮って葉状部の面積を求め、成長曲線をゴンペルツ曲線に近似した。 その結果、硝酸塩添加濃度が 0 ~ 40 μMの場合には、硝酸塩添加濃度が低いほどゴンペルツ曲線の変曲点に早く到達し、窒素不足による成長抑制が早期に生じたことが示唆された。ところが、 60 μM以上では硝酸塩添加濃度を高めても変曲点に達する期間が長くなることはなく、実験期間内には窒素不足に至らなかったことが示唆された。そこで、変曲点に達する期間を成長抑制の指標としてペレットの影響を検討した。その結果、ペレット無添加区の変曲点が培養 17.1 日目だったのに対し、全てのペレット添加区で変曲点に達する期間は負の値になり、成長が早期に抑制されたことが示唆された。また、ペレット添加区の藻体表面には、パッチ上に細胞が死滅いる様子が観察された。本研究では、ペレット懸濁液の上清を用いて実験を行ったが、ペレットに含まれている油がミセル状に懸濁し、その一部に生成する過酸化脂質が有害成分と考えられる。このことを証明するため、ミセル状の油分を遠心分離などで取り除き、成長抑制効果が軽減されるかどうか検討することが今後の課題である。
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