研究概要 |
目的:アミノポリカルボン酸系金属キレート剤(APCAs)は,金属イオンに配位し錯体を生成する性質により家庭用品から工業製品の製造工程まで多方面に亘って使用され,様々な形態で環境水中に排出されている。これまでにAPCAsをその鉄錯体として逆相液体クロマトグラフ法(HPLC法)により一斉分析する法を開発した。更に陰イオン交換固相カートリッジを用いる分離濃縮を組み合わせ,河川水中の微量APCAsの測定法を確立して実試料に適用し,APCAsのうち使用量の多いEDTAが河川水中に広く,DTPAが局所的に高濃度に存在することを確認した。本研究課題においては,海水中のAPCAs測定の前処理方法を確立することにより,広く海水を含めた環境水中のAPCAsを測定し,水環境中のAPCAsの動態を解析することを目的とする。 結果:APCAsのうちEDTAについて活性炭固相カートリッジを用いる濃縮について検討した。EDTAをあらかじめ鉄錯体としてカートリッジに吸着させ,塩酸含有メタノールを用いて溶出,これを濃縮乾固したのち移動相に溶解しHPLC法により分析した。この方法により海水中のEDTAを1.0nMまで定量することができた。また,環境水サンプルを採水する地点を選定するための環境調査を行い,富山県内の河川,および富山湾における採水地点を選定した。 今後:昨年度行った環境調査の結果に基づき選定した採水地点において,海水及び河川水のサンプリングを行い,活性炭固相抽出-HPLC法,及び陰イオン交換固相抽出-HPLC法を用いてEDTAの測定を行う。また,重金属定量及びEDTAの金属種別定量も行い,得られたデータをもとに水環境中のEDTAの動態を解析する。また,EDTAと同様に河川水中に存在するDTPAの,海水での分析のための前処理方法を検討する。
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