研究課題
MIWI/PIWIL1は、精巣特異的Argonauteタンパク質のひとつであり、その欠損マウスでは精子形成が球状精細胞の段階で停止する。MIWIは、低分子RNAであるpiRNAを介して標的分子に作用すると考えられているが、その機能は不明であった。申請者らは以前に、MIWIがポリA鎖結合タンパク質PABPC1と直接相互作用することを報告した。PABPC1は翻訳調節因子であることから、MIWIは翻訳にかかわっているのではないかと仮定し、解析を行った。一方、精巣特異的なPABPC2は、PABPC1と異なり翻訳不活性なmRNP画分におもに存在することから、翻訳抑制的に働くことが考えられた。欠損マウスを作製し、その機能について検討した。1.MIWIの機能解析・・・MIWIをバクテリオファージのλNペプチドとの融合タンパク質(λN-MIWI)として、またレポーター遺伝子としてλNペプチドが結合する部位であるBoxB配列6個をタンデムにホタルルシフェラーゼmRNAのORF下流に挿入した融合遺伝子(F-Luc-6BoxB)をHEK293T細胞で共発現させ、λNペプチドの有無によるルシフェラーゼ活性の変化を調べた。MIWIをレポーターRNAに強制的にリクルートさせた場合、AGOタンパク質と同様、その翻訳を抑制することが判明した。また、MIWIを構成する3つの主要ドメインに分割し解析を行ったところ、PABPC結合ドメインであるN末端ドメインとPIWIドメインの2ヵ所が翻訳抑制能を有することが明らかとなった。さらに、これら2つのドメインは翻訳抑制因子であるPAIP2とも直接結合することから、MIWIは標的mRNAにPAIP2をリクルートすることにより、翻訳を抑制することが推測された。このことは、AGOによる翻訳抑制に必須なエフェクター因子であるGW182/TNRC6にMIWIが結合しないこととも一致する。2.PABPC2の機能解析・・・λN-PABPC2をF-Luc-6BoxBとともにHEK293T細胞に共発現させた場合、予想に反しレポーターRNAの翻訳を活性化した。実際、PABPC2はλNペプチドの有無にかかわらず、HEK293T細胞においてポリソーム画分にも存在した。PABPC2の機能を明確にするために、欠損マウスを作製したところ、その精子形成は野生型と同じように進行し、結果として正常に産仔を得ることができた。したがって、PABPC2は生体内において特別な機能は有していないことが考えられた。
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Biochimica et Biophysica Acta
巻: 1804 ページ: 1272-1284
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