研究課題
植物は、その体を構成する窒素資源の50%以上を光合成関連タンパク質の合成に投資する。一方、乾燥などの悪環境ストレス下では、光合成タンパク質の選択的分解が起こると共に、窒素を高含有する適合溶質を選択的に高蓄積させ、環境適応能の向上を図る。この時、植物の一連の代謝変動を統合的に制御する「司令塔」の実体解明を目指し、窒素センサーであるP-IIタンパク質とストレス応答との関連に着目した。乾燥強光ストレスに耐性を持つ野生種スイカは、ストレスに際してシトルリンを高蓄積させる。シトルリンはアルギニン代謝経路の中間体である。その12種の代謝酵素群のうち、経路のボトルネックであるAGK酵素は、ストレスに伴い活性が増加するだけでなく、アルギニンによるフィードバック阻害が解除される。組換体タンパク質を用いた生化学的解析により、野生種スイカ由来のAGK酵素は通常は経路の最終産物であるアルギニンにより顕著なフィードバック阻害を受けるが、P-IIが共存する場合このフィードバック阻害が解除されることが判明した。すなわち、P-IIタンパク質がシトルリン蓄積において代謝流量を維持する役割を果たすことが示唆された。さらに、P-IIは油脂生合成経路の初発酵素であるACCaseとも相互作用し触媒活性を増大させるが、野生種スイカでは、乾燥ストレスに伴い葉の表皮におけるクチクラワックスの蓄積量が、顕著に増大することが示された。さらに、光合成タンパク質のうちチラコイド膜において存在量が大きいATP合成酵素複合体の分解が、構成因子の一つであるεサブユニットがストレス誘導性プロテアーゼにより分解すること引き金であることを示した。この分解にP-IIが関与するかを解析中である。これら一連の研究結果により、環境ストレスに際して植物葉の窒素および炭素代謝を協調的に制御する仕組みについて、新規な分子的現象を見出すことができた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biosci. Biotechnol. Biochem.
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