小胞体で合成された分泌蛋白質、膜蛋白質はその機能すべき場所に正確に輸送される必要がある。またこの際、まだ的確にフォールディングされていなかったり変性してしまった異常な構造をした蛋白質は、小胞体およびゴルジ体といった分泌の初期過程において取り除かれなければならない。小胞体とは別にゴルジ体は積極的に異常蛋白質を小胞体へと送り返す機構などを通じて品質管理を行うための仕組みに深く関与していると考えられる。本研究ではゴルジ体から小胞体への逆行輸送経路の制御を司る因子を解明することを目的とする。 本年度はこの目的達成のために次のような実験を行った。 1.逆行輸送をモニターするためのプローブの設計、そのプローブを発現するためのプラスミドの構築、さらにそのプローブを安定的に発現する細胞株の作製。 2.逆行輸送に関わる因子の中で、関与が予想されるタンパク質Rab2およびGolgin245、GMAP210をコードする遺伝子のクローニング、発現および発現抑制プラスミドの作製、タンパク質精製のためのタグ付きタンパク質の発現システムの開発。 3.ヒト培養細胞を用いたタンパク質の発現と精製システムの開発。 4.逆行輸送経路の観察を行うための顕微鏡システムの最適化。 これらの実験により、現在までに次のような結果を得ている。 1.Rab2タンパク質とその複合体の精製。複合体を形成するタンパク質の同定。 2.逆行輸送プローブssFM4-hGH-CHR-KDELを用いた逆行輸送の観察。 以上の結果を総合して研究を今後進めることにより、逆行輸送経路を司る因子や制御する因子の同定が進み、経路の解明に寄与することができると考えられる。
|