小胞体で合成された分泌蛋白質、膜蛋白質はその機能すべき場所に正確に輸送される必要がある。またこの際、まだ的確にフォールディングされていなかったり変性してしまった異常な構造をした蛋白質は、小胞体およびゴルジ体といった分泌の初期過程において取り除かれなければならない。小胞体とは別にゴルジ体は積極的に異常蛋白質を小胞体へと送り返す機構などを通じて品質管理を行うための仕組みに深く関与していると考えられる。本研究ではゴルジ体から小胞体への逆行輸送経路の制御を司る因子を解明することを目的とした。 本年度は前年度までの結果を受けてさらに次のような実験を行った。1.Rab2結合タンパク質であるTBC1D16の機能の解析 2.別の結合タンパク質Golgin-45の機能の解析 3. 逆行輸送経路を定量化するアッセイの開発。 その結果次のことが明らかとなった。1:Rab2タンパク質は活性化することにより、別のRabタンパク質を不活性化するGAPである、TBC1D16を膜上にリクルートする。このことによりまだ機能するべきでないRabタンパク質を膜から排除し、輸送ステップの逐次的な進行を制御している。この次のRabはおそらくRab43およびRab30であると考えられる。2:Golgin-45はその発現を抑えることによりゴルジ体のパラレルな結合が阻害され、ゴルジ体が単体として(ミニスタック)細胞中に分散するようになること、一方で順行輸送に阻害効果はないこと、逆行輸送が一部促進する傾向があることなどから、逆行輸送に対して、ゴルジ体をコーティングルすることにより阻害的な働きを持っていることが示唆された。 以上によりゴルジ体ー小胞体間でいくつものRabタンパク質とその結合タンパク質の共同作業により形成される、Rab-Cascadeの仕組みの一端が明らかになった。
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