研究概要 |
本研究では、医薬品開発のターゲットとして注目されているリガンド不明なオーファンGPCRのリガンドのスクリーニング法の確立及び同定を目指し、宿主由来の生体膜を内包するバクテリオファージPR772のウイルス粒子産生機構を利用して、その生体膜中にリガンドが既知のGPCRを発現させ、RI標識リガンドあるいは組織抽出液と混合し、リガンドを単離する方法を構築することを目的とする。既に、PR772のウイルス粒子形成に必要と考えられている4種のウイルス粒子構成タンパク質、メジャーキャプシドタンパク質P3、膜貫通タンパク質P16、マイナーキャブシドタンパク質P30、ペントンタンパク質P31にHisタグを付加したHis-P31を大腸菌で共発現させることにより、キャブシドの表面にHisタグが露出した生体膜をもつウイルス様粒子(His-VLP)を再構成し、大腸菌から精製することに成功している。そこで、この再構成系を基に、GPCRとP16との融合タンパク質を他の3種のウイルスタンパク質と大腸菌で共発現させることにより、GPCRを内包したHis-VLPの再構成を試みた。既知のGPCRとしては、ファミリーlaに属し、RI標識したリガンドが入手可能であるため、13個のアミノ酸からなる脳腸ペプチドであるニューロテンシン(NT)をリガンドとするNTレセプター1(NTR1)を選んだ。N末端側にFLAGタグを付けたNTR1のC末端側にグリシン-セリン-セリンから成るペプチドリンカーを4回、6回、及び9回繰り返してウイルス膜貫通タンパク質P16を連結させた融合タンパク質発現用プラスミドをそれぞれ構築し、他の3種のウイルスタンパク質発現用プラスミドと共に大腸菌に導入し、Overnight Express autoinduction systemのInstant TB培地(Novagen)を用いて大腸菌を培養、タンパク質の発現を誘導して解析を行った。結果、融合タンパク質のペプチドリンカーの繰り返し数が6回の場合で、4種のタンパク質の比較的良好な共発現が見られた,また、ペプチドリンカーの配列をグリシン-スレオニン-(グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリン)3-グリシン-セリンに変えた場合、ウイルスタンパク質の発現量のバランスが崩れ、ペプチドリンカーの配列は、グリシン-セリン-セリンを数回繰り返す方が適していると考えられた。さらに、培地の種類を検討した結果、Instant TB培地よりもSystem 1を2xYT培地に添加した場合で4種のウイルスタンパク質の発現の向上が認められた。そこで、4種のタンパク質を発現させた大腸菌を大量培養して融合タンパク質を内包すると推測されるHis-VLPを精製し、現在、RI標識したリガンドが実際に結合するかどうか検証する準備を行っている。
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