研究課題
病原体“プリオン”が感染細胞から近隣の非感染細胞へ細胞間を伝播するメカニズムは未解明である。本研究では、脳内でのプリオン拡散に重要な役割を持つミクログリアに注目し、ミクログリアで多く発現しているATP受容体ファミリーの1つP2X7受容体とプリオン放出機構との関連性に焦点を絞って検討する。本年度はプリオンを脳内接種したマウスにP2X7受容体アンタゴニストとして知られるBrilliant blue G (BBG)を投与して、プリオン病発症に対する効果について検討した。プリオン接種後、発症直前のマウスにBBGを1週間に3回の割合で3週間腹腔内投与した結果、脳内に蓄積する異常プリオン蛋白質量は有意に減少することがわかった。また、プリオン病発症に伴い脳のP2X7受容体発現量が増加するが、BBGの投与によってその増加が有意に抑制されることもわかった。しかしながら、プリオン病の病態を反映するシナプスの脱落あるいはアストロサイト・ミクログリア細胞の増殖(グリオーシス)は抑制されなかった。加えて、プリオン接種後のマウスの生存日数も延長されないことがわかった。これらの結果から、BBGには異常プリオン蛋白質蓄積を阻害する効果はあるが、少なくとも今回の実験条件においてはプリオン病に対する治療効果を認める事は出来なかった。プリオン病の病態進行におけるP2X7受容体の役割の解明には、BBGの投与条件のさらなる検討あるいは他のP2X7受容体アンタゴニストを用いたin vivoでの検討を継続する必要があると考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS ONE
巻: 7 ページ: 37896
DOI:10.1371/journal.pone.0037896
Cell Biol. Int.
巻: 36 ページ: 1223-1231
10.1042/CBI20120329