<研究の目的>当該年度における研究では、野外に発生する冬虫夏草属菌の採取と培養および消化管免疫応答を指標に免疫賦活化アジュバント活性を示す糖蛋白の成分分析に着手することを目的とする。 <研究実施計画>平成22年度は、採取地域(東北・北陸エリア)の梅雨明けが早く高温乾燥な夏が続いたため、菌育成環境の悪化や昆虫発生数の減少が影響したが、採取回数を多くすることにより、採取目標のハナサナギタケを含む5種20検体の菌体を採取するのに成功した。採取した菌種のうち、ハナサナギタケ、クモタケ、ムラサキクビオレタケ、カメムシタケについては、菌糸体の発生が良好であったので、昆虫成分を含まない酵母寒天培地で大量培養を行った。次いで、培養代謝液のエキス調整後に、分子ふるいゲル濾過カラムに通導して糖蛋白の精製を行いマウスで消化管免疫賦活化試験を行った結果、ハナサナギタケ、クモタケの培養代謝液において、3種類の免疫調節が含まれていることが判明し、2種の菌に含まれる糖蛋白の分子量は近似していることが電気泳動により判明した。現在、これらの糖タンパクについて精製と大量培養によるスケールアップを行っている。23年度以降は自然環境の影響(異常気象や採取先の震災被害)も考慮して、野外採取の回数の増加と採取次期の延長を行うとともに、ハナサナギタケ胞子を含む子実体を凍結保存し、且つハナサナギタケ以外の菌種についても調査対象を拡大して研究を実施する予定である。
|